優しい声

健吾の胸に顔を押し付けて、気づかれないようにため息。

なかなか前向きな自分を取り戻せない焦りを捨てるように…。

「そうやって落ち込んで拗ねて愚痴ってる柚が、懐かしいな…」

「…え…?」

「いや…。嬉しいんだ」

明るい声の健吾の指先が私の頭を撫でて、その指先からも迷いのない動きが感じられる。
私がいくら愚痴っても落ち込んでも気にしない…ううん、逆にそんな私を楽しんでるような仕種と声…表情が、どうしてなのか理解できない。

「…健吾?」

「ん…?

もっと拗ねてひがんで落ち込んで泣いて。
俺に当たり散らしていいんだぞ」

「は?…どういう事?」

くくっと笑う健吾の体から、ダイレクトに震えまで伝わってきて本気で言ってるのだけはわかるけど…?

急に私を甘やかそうとする健吾の真意がわからない…。

「柚の本当の姿だろ?
すぐに落ち込んでひねくれて拗ねて…」

「は…?どういう…」

肘をついて体を起こすと嬉しそうに笑う健吾の顔。
なんだかその笑顔が懐かしくて久しぶりに感じる
ときめき…。