「どうぞお入り下さい」
再びインターホンから聞こえてきた声に 私達は顔を見合わせた。
私は思わず
ごくりと生唾を飲む
大きな鉄製の門を開けて
敷地内に足を踏み入れる。
綺麗に手入れされた芝生の上を15メートル程進んでいくと
やっとお城のような家の前まで辿り着いた。
立派な扉を前に 緊張が高まる。
だが
なかなか扉が開かず、ふと歩いて来た道に目を向けてみた
門が遠い。
門から家までこれだけの距離がある
純はこんな大きな家に住んでるんだ。
何だか 彼が違う世界の人間みたいで、悲しくなる。
―ガチャ
そんな事を考えいる間に扉が開けられた。
「…どちら様かしら」
出てきたのは女の人。
インターホンに出た人と同一人物かは分からない。
いかにも高そうな洋服とアクセサリーを身に纏っていた
純のお母さんだ
直感的に そう思った。
「純君と親しくさせて頂いています。坂上と申します。こちらは山瀬です」
建斗の口振りに私は驚いた。
建斗の口からそんな丁寧な言葉が出るなんて
思ってもみなかったからだ
「…ああ、貴方前にも来たわね」
建斗の顔を見て思い出したのか 女の人はそっけなく返事をすると
次は私に視線を投げ掛けた。
慌てて頭を下げると
女の人は鋭い目付きで
私の頭から足元までじっくり観察した
「…二人ともあの子の友達ね。悪いけど、あの子はここに居ないわ」
女の人は心底興味がなさそうに
ぶっきらぼうに言った。
“純”と名前を呼ばず
あの子と言う辺りに 本当に縁を切っているのかと思う
「居ないって、どこに行ってるんですか」
建斗が慌てて聞き返すが 女の人は 知らない と繰り返すだけだった。

