純は煙草を一本取り出すと それをくわえ
ライターをカチカチ鳴らすが
強くなってきた浜風で なかなか火が点かない。
そんな姿を見て 私も風よけに手をかざした。
「…去年、初めて海に来た時もこうやって火点けたよね」
ライターの火口を見つめながら、私は言った。
「…純との思い出の場所だもん…これからだって何度でも来たいよ」
純は ライターを下ろし
くわえていた煙草を手に取って、じっと私を見つめた。
「…亜紀は、それでいいのか?俺と居れば いつ絡まれたり喧嘩になったりするか 分からねぇよ?」
「そんなの関係ない。純が…好きだから」
恥ずかしくて
最後の方は俯いてしまった私に
「…抱き締めていい?」
と、言う純。
「えっ?あ、えっと…ひゃあ…っ」
返事を聞かずに 抱きすくめられた。
「俺の方が亜紀の事、好きだから」
ぎゅう、と抱き締める力が強くて
耳元で聞こえる言葉が嬉し過ぎて
このまま
時間が止まればいいと思った―……

