「残るのは…ご両親の部屋だけね」

「えと、その…行かなきゃダメですか」

「そりゃあね。ちゃんとしたいでしょう?」

「…はい」

現実の方で先輩が重ねた掌が僕の右手を少し強く握った。

「大丈夫よ。ちゃんと唱えてね」

「…はい」


(いちにーさぁーん、ごーろくしちはち)

とんとんとーん・とんとんとんとん。

(いちにーさぁーん、ごーろくしちはち)

とんとんとーん・とんとんとんとん。

(いちにーさぁーん、ごーろくしちはち)

とんとんとーん・とんとんとんとん。


両親の部屋へと続く襖の取っ手に手をかけて、僕は何度も数を唱えた。先輩の指が刻むリズムが、心なしか優しく緩やかで、僕の気持ちも少しずつ落ち着いてくる。


(いちにーさぁーん、ごーろくしちはち)

とんとんとーん・とんとんとんとん。


そして僕は、襖を開けた。