「あの、すみません。」


彼女は私の動揺なんて知るはずもなく、普通に話し掛けてきた。



「は、はい!?」



……ああ、私のばか。
変な声が出ちゃった。





「あの、今日ケーキを予約していた……」


そう言いながら私の顔を見た彼女は、少し考えてから、また口を開いた。





「高原……さん?」



「…は、はい。えっと…お、お久しぶりです。以前は、その……お世話になりました。」


しどろもどろになりながら、自分でも訳の分からない挨拶をしてしまった。



……だって、だって、まさかここに、社長が来るなんて考えもしなかったから!

しかも、社員200人以上抱える会社の社長が、話をした事も無いただの事務員で、しかも退職した私の事を覚えているなんて。


それってつまり……。



隼人さんが危惧していた通り、私の事も調べた?





嫌な汗が背中を伝い、寒気がしてくる。


……どうしよう。