ほら、笑って笑って


ゆっくり後ろを振り返る。



「…嘘。」




そこに立っていたのはあの人。


公園で泣いていた私をコーヒーに誘って、

優しいかと思ったら暴言を吐いた

あのハヤト。




そして彼は、驚く私をちらっとだけ見て、また直ぐに常務を睨む様にしながらこちらに歩いて来た。



「隼人君、これは…その…」


常務は必死に言い訳を考えている様で、しどろもどろになっている。




……なんだか、こんなに慌てている常務を初めて見た。

私の知ってる、魅力的な常務とは別人みたい。




そんな風に常務を見ていたら、突然腕を掴まれる。


「きゃっ!?」


「お義兄さん、俺はこの事姉貴には黙ってます。胎教にも悪いだろうし。
ただ、これっきりにして貰えますか?
次は……ありませんから。」



私の腕を掴んで引き寄せた彼は、怒りに満ちた表情で常務にそれだけ告げると、



「ユイちゃん、行こう。」


そのまま私の手を取り、社長室を後にした。