「優衣、いらっしゃい」

マンションに入ると優しい笑顔の隼人さんが待っていた
でも、何となく分かる
その笑顔の奥で私の心配をしてくれている

隼人さんの顔を見たら涙腺が緩んで
耐えきれずに涙が溢れる

「隼人さん…」
「大丈夫?何があったの?」

隼人さんに抱きつくと暖かい腕と体で私を受け止めて、細くても筋肉のついた腕で私を抱きしめてくれる


「…お母さんがーーがんだって」

「…え?」

涙声のまま
募る不安を隼人さんにぶつける

「もう助からないって…もう痛みを取ってあげる事しかできないって…最後をどうしたいか家族で考えて下さいってーー」



"治療で治せる段階ではなく、大腸以外に転移も見られています。今後は緩和ケアの医師にも関わって頂きーー最後をどうしたいか等、ご家族でお話して下さい"


頭の中で医師の言葉が
何度も何度も何度もループしている