「そうだ!…私、昨日あの黒い男に連れられてーー…!」


ガバッ

と、ベッドから思い切り起き出した。


眠気が一気に吹き飛ぶ。



「ごめんなさいっ、私上手くここから抜け出せなくて、助けを呼びに行けなかった」

目の前のメイドさん、静音さんに、
私は謝る。


すると、静音さんは目を丸くした後、

ふふふっ、
 と、綺麗な笑い声をあげて、

「すみません。昨日は悪ふざけが過ぎました」

「え?」

「私は、紘夜様に捕われ、連れられて来た愛人ではありません。こちらに長い事お仕えしている、普通のメイドでございます」


え?
愛人じゃない?


私みたいに連れ去られて来た訳じゃないの?