近くなる殺気の中、
そう告げ、電話を切ろうとすると、


『やだね、そんな勝手な頼み事きけるか』

珍しく、大きく鋭い吉水の声が聴こえた。



「……吉水…」

再び携帯を耳に寄せ、
戸惑いながら、名を呼ぶと、



『いいのか?そんな事言ってるとお前から実織ちゃん奪うぞ。
それが嫌だったら必ず戻れ、紘。
実織ちゃんのもとへ』


いいな、

と、一言付け加えると、
吉水の声は消え、不通を知らせる機会音が響いた。



ツー、ツーツー

機会音を聞きながら、俺は目を閉じると、



よぎる、

吉水のそばにいる、実織の姿。



表情は思い浮かばないが、
俺以外の男のそばに実織がいる。



そう、思うだけで、

嫌な感情があふれた。