数秒待つと、
相変わらず、軽い返事が返ってきた。


この緊張感を一気に吹き飛ばす声に、
思わず、
ふ、
と笑みが零れた。


『なんだよ、紘~。いきなり気取った笑いしやがって』

「いや、なんか……やっぱお前だな、と思って」


変わらない吉水の声に、俺は少し肩の力を抜いた。



『なんだそりゃ、たいした用がないなら切るぞ』

「待て、一つだけ。頼みがある」

『何だよ。手短にしろよー。オレはこれでも医者なんだから、忙しいんだ』


あぁ、だから、


「実織の手当てを頼む」


『え!? 手当てって、実織ちゃんどうしたんだよ?』

「撃たれた。肩の近くをかすったみたいだ。それに首筋も少しナイフで切った」


『な!紘っ、お前がついてて何やってンだよ』

あぁ……

何やってンだ俺はーー



実織を失うのが怖くて動けない結果が、

これか。


情けなさ過ぎる。