気付いた時には、

あたりは硝煙の匂いと、
血の匂い、


そして、
冷たい雨の音と匂いが、

俺を包んでいた。




緋刃の姿は無く、

路地裏の奥へと血の跡が続いているのが、
かすむ視界によぎった。


雨の中、
びしょ濡れの俺の制服は、

所々破れ、
血が滲んでいた。


俺は肩で荒くしていた呼吸のまま、
雨に混ざる大きな血溜まりの方へと定まらない足取りで歩き出した。


そこに倒れる、
父さんの体を抱き起こす。


「父、さん?……父さん?」

呼びかけに、
わずかに開く、瞼。


震える手で、
俺の髪を撫でる。


懐かしいその手は、

弱々しく、
紅く血に染まり、


「……紘、夜……誕生日、祝ってやれなくて……すまんな……」


その言葉とともに、


紅い水溜まりへと、



滑り落ちた。