冷たい雨に咲く紅い花【前篇】

この来る日のために、
父さんはあらゆる術を準備していた。

銃の扱い、
戦闘術、


表の仕事は〝兄〟にまかせることが多くなり、

父さんは真影の家から離れた場所で、
過ごす事が多くなった。


それが、
いま俺が住む、あの屋敷だった。



『明日は、真影の家に戻る。
紘夜、お前の16の誕生日だからな』


久しぶりに電話で話した父さんは、
疲れているようだった。


「父さん、大丈夫?」

問いかけると、


『大丈夫だ。心配するな』


そう、答えた。

でも、

なぜか胸騒ぎがして、


俺は、
父さんを探した。




そして、

降り出した雨の中、


路地裏で見つけた。



ひざまずく父さんと



銃を構える、

緋刃をーー。