「緋刃!」

俺は、後ろ腰に差し込んでいたマニューリン製の銃を素早く引き抜いた。


「おっと、コーヤ。この娘に当たっても知らねぇぞ」

言うが早いか、
緋刃はそばにいた実織を腕で抱えるように引き寄せた。


よぎる、

嫌な記憶。



嫉妬で、気がおかしくなりそうだ。



「大人しくしろよ、コーヤ。俺の手が滑って〝実織〟の顔に傷がつても知らねえからな」

ニヤリと笑い、
緋刃はサバイバルナイフを取り出し、
実織の頬にあてた。



構えた銃は、確実に緋刃を捕らえていたが、
実織にもしもの事があったら、
そう思うと、

俺は臆病になった。



情けない。


前の俺なら、間違いなく引き金を引く。


なのに、
実織を前にすると、

こうも俺の動きを、俺の心を乱すものかと、


はじめて知った。