冷たい雨に咲く紅い花【前篇】


「私が9歳、兄が12歳。紘夜が7歳の時だったかしら。シングルマザーだって言ってたけど、しばらくして分かった。
紘夜は父の隠し子だったのよ。
母は、父に裏切られていた」


ギリ、
と、紅いネイルの綺麗な爪を、
樹の幹に突き立てる、夕綺さん。


表情が、険しくなっていく。

でも、
その表情には、寂しさや苦しみが込められているようで、

なんだか、哀しかった。


「……だから、紘夜に押し付けるんですか?
〝闇〟を独りで背負えと?
傷ついても、苦しんでも、
紘夜に全部、押し付けるんですか!?」


震える、声。

泣きたいわけじゃない。


でも、
哀しかった。



紘夜を想うと、

夕綺さんや、お兄さんを思うと、



哀しかった。