冷たい雨に咲く紅い花【前篇】

颯爽とした歩みを止め、
夕綺さんが私を振り返る。


ふわり、

彼女の首元を飾る、黒いレースのストールが風に舞う。



「……大事にされてるのね、
羨ましいわ」


風に消えそうな声で、そう呟く夕綺さんは、
少し、寂しそうな感じがした。


「……でも、まさかあの場から本当に逃げ切るとは思わなかったわ。
やるじゃない、あなた」


ふふっ、
と楽しそうに笑う夕綺さん。


その表情は、
寂しさも哀しみも感じられない、

緋刃と一緒にいた時の、あの自信に満ちた表情だった。


「……夕綺、さんが、教えてくれたからーー」


紘夜の銃の事。
だから、



「試しただけよ」


さらりと、言い放つ夕綺さん。




ーーえ?

試した?