冷たい雨に咲く紅い花【前篇】

「実織様?いかがなさいました?」

固まる私を、不思議そうにうかがう静音さん。

なにか、
なにか話さないと、と思えば思うほど、

言葉が見つからない。


「静音、みんなと広間の手伝いにまわってちょうだい。
そのお嬢さんは、私が紘夜の所に連れて行ってあげるわ」


「夕綺様……」

戸惑う静音さんに、
ふふ、と夕綺さんは笑いながら、

「そんなに警戒しないでよ。
いくら紘夜の連れだからって、女の子相手に何もしないから」


そ、その笑いが怖いんですけど……

行かないで、静音さん!
との私の心の叫びも空しく、

それでは、お願い致します。

と、静音さんは廊下を進んでいった。



一度、廊下の角を曲がる時、
静音さんが私の方を振り返ったけれど、

私は、静音さんに視線を合わせる余裕なんてなかった。


目の前に立ちふさがる、
夕綺さんの

射るような視線が、私を離さなかった。