冷たい雨に咲く紅い花【前篇】

桜色のふわりとしたドレスに身を包み、
真珠の髪飾りで結い上げた髪。


それは、
はじめて着飾った時と同じ姿。

このドレスがいいと、私が選んだ。


紘夜が、
「似合う」と囁いてくれた、ドレスだから……。




「紘夜様は先に広間でお待ちだと思います。実織様」


紘夜様のエスコートでなく申し訳ありません。
すまなそうに肩をすくめる静音さんに、

私は首を横に振った。


「きっと紘夜のことだから、煙草でも吸って待っててくれるよ」


そう、静音さんに笑顔で答えた。
その時、


向こうの廊下から、
綺麗な女の人が現れた。



「夕綺様」

そう名を呼び、廊下の道を譲る静音さん。


でも、私は



その女の人と重なった目線が、

そらせなかった。