「紘夜?何してるの?」


いつものように吉水さんのところに入院中の紘夜を訪ねると、

いつもはラフな格好でベッドに寝てたり、
ソファで横になって新聞を読んでる紘夜が、


今日訪ねると、
黒いジャケットを羽織ろうとしている所だった。


「何って、帰るんだよ」

さらりと言う紘夜。


「え?……えー!退院出来るの!? 治ったの?」

予想もしてなかった事に驚いて、危うく静音さんから預かった紘夜への郵便物の束を落としそうになった。


「完治はしてないよ。一応オレは止めたんだけどねぇ」

そう言って紘夜のいる部屋に吉水さんが入ってきた。


「え!そうなんですか!? じゃあダメだよ紘夜!」

「これだけ動ければ十分だ。これ以上吉水のマズい飯食ってたらますます悪化する」

「だってさ。ま、紘は言い出したら聞かないから」

うん、それは納得。


でも……

「んな顔すんな、実織。大丈夫だから。それに……」

そう、言いかけ、
紘夜は私が持っていた紘夜への郵便物の中から、一つの封筒を抜き取る。


上質の紙に藍色のロウで封をされた、
家紋らしき模様のあるその封筒を。