お前は周りを突き放すくせに、

みんな、
お前を突き放せないんだ。



実織も、
静音さんも、
きっとあの医者も、

そして、俺も……


なのにお前はただ一人だけは
その手に掴んだ。


達花実織、
ただ一人だけは。



静かに目を開き、
紘夜は天井を見つめる。


「実織をこれ以上危ない目には合わせない。だから、」

「だから、切るのか?俺のように?」


冷たい言葉を投げかける俺に、
紘夜は静かに視線を移し、


「ーーいや、切れそうもない。
俺は実織を離したくない」


真っすぐに俺を見て、言葉にする紘夜。


「……へぇ…変わったな、紘夜。……いや、実織に会って、変わったか?」

「そうだろうな」

ふ、
と静かに笑う紘夜。


昔に戻ったような、不思議な感覚がした。