「実織様はご無事ですか?」

「あぁ無事だ。少しだが、話した」


疲れてるのか、
泣いたのか…

声はかすれていたが、
大丈夫、
と、力強く答えていた。


だが、真影が泣かせたとしたら、

許さん!


などと、思い出していると、


「…あの、紘夜様、は…?」

落ちついた口調だったが、
女性の手は、少し震えていた。


ーー紘夜は…

「……大丈夫。仕事で遅くなったそうだ。
実織を送る途中で急な仕事が入ってしまったらしい。
まだ色々かかるから、ここに帰るのは2、3週間先になってしまうが、大丈夫だから心配しないよう君に伝えてくれと、そう真影が言っていた」


屋敷の者には、
大丈夫だから心配するな。そう伝えてくれと、

言っていた。



あいつが、
紘夜が

大丈夫、心配するな、


そう言う時は、

大丈夫じゃない。


あいつは、
そういうヤツだ。




俺は思い出す。

封じた過去の記憶を、少しだけーー