†


カラン、

手に持っていた医療器具を、銀色のトレイに軽く放る様に置くと、
一気に安堵と疲れで大きな溜め息が出た。


「どうしたんですか!? 紘夜、大丈夫ですか?」

少し離れた所の長椅子で治療の様子を見ていた女の子が、
オレの溜め息に反応し駆け寄ってきた。

「いや、大丈夫だよ。治療は上手くいった。
まぁ、右腕の貫通銃創と右足の貫通銃創、あとは打撲、
酷い方ではあるけどね」

心配そうなその女の子に、
オレは軽く片手を挙げ、終わったとの合図とともに安心するよう微笑むと、


「よ、よかった……」

祈る様に組んでいた両掌をおでこにつけながら、
肩を震わせ、女の子は涙声になる。


「まだ麻酔が効いてるから、目を覚ますのはもう少しかかるけどね」

手を覆っていた医療用の手袋を脱ぎ、紅くなったそれをゴミ箱に捨てながらそう告げると、


「…すみません。洗面所…貸していただけますか?」

先程とは少し様子の違う女の子が、
うつむき、小さな声で呟いた。



感情が、

感じられない声でーー。