「私の前で、やめてよ。緋(フェイ)」 凛とした声が、暗い路地裏に響き渡った。 その声に赤髪の男は少し反応して、 私から口を離した。 すぅーーッ 突然、取り入れた酸素と、 感触の残る気持ち悪さで、 「ーーごほっ、げほ、げほっ…」 むせ返る、呼吸。 苦しい、 気持ちが悪い、 吐き気と乱れた呼吸で、 涙があふれ、流れた。 今度は、 堪える事など、出来なかった。 「実っ…」 名を叫ぼうとして、 ためらう紘夜の声が届く。 紘夜を見る事も、 出来ない。