冷たい雨に咲く紅い花【前篇】


あやうく銃を落としそうになりながらも、
体勢を立て直す。


ーーくっ…


「相変わらずだな、コーヤ。オレを一人で倒せると本気で思ってるのか?」


冷たく、威圧的な口調が俺に近づいて来る。



嫌な気配だ。



馴染み深い、

嫌な気配が、俺を追い詰めた。



「…緋刃(ヒジン)…きさま…」

撃たれた右肩を抑え、
俺は振り返りながら名を呼ぶ。


姿を見るまでもない。




この嫌な空気、

忘れはしない。