冷たい雨に咲く紅い花【前篇】

予想外の動きに、
俺は男の蹴りをモロに顔面に受けてしまった。


ガッ!
「ーーチッ」


じわりと、
口の中に広がる、血の味。


その瞬間、
自分の中で何かが暴れだしたかのように、


研ぎ澄まされた感覚と、
鋭く蹴り上げた脚が、

大柄の男を捕らえた。


ガッ!

男の脇腹にくい込む、鈍い音。

「ぐはっ!」

男は苦しそうにうめき、その場に崩れ落ちた。


やるしかないか、

出来れば、もっと奥の路地裏に行ってからにしたかったがーー、


俺は後ろ腰に差していたマニューリン社製の銃を取り出す。

手早く黒いジャケットの内ポケットから、
鈍く光るサイレイサーを取り出し、銃口に片手で回しつけた。


と、
その時、