冷たい雨に咲く紅い花【前篇】


 † ー実織ー †


暗い夜の闇に出ると、
空から小さな雫が幾つも降っていた。



ーー雨?

と、店先で立ち止まっていると


ふわり、
と香る、甘い煙草の匂い。


その香りに鼓動が、


ドクン、と不安の音をたてた。





甘い煙草の匂いは、

区切りの合図。



そして、



外は、雨。