目を閉じ、 甘い匂いに包まれる。 悪くない、 そう、思った。 が、 そんな俺の耳に、 雨音が、 聴こえてきた。 小さな雫の雨音が、段々と強くなる。 まるで、 眠っていた俺の心を、揺り動かすかのようにー… 空から降り出した雨が強くなり、 俺は黒い煙草を取り出し、一本くわえた。 実織のバイトが終わるまで、30分ある。 いけるか? 鈍色のライターで火を点け、煙をくゆらせる。