† ー紘夜ー † 実織を車で待つ間、 俺は座席を倒し目を閉じ、体を休ませた。 眠るわけではない。 と、いうか、 眠ることは出来なかった。 目を閉じると、 色々なことが思い出される。 嫌な記憶ばかりだ。 だが、 ふと、甘い匂いに包まれ、 緊張の糸が途切れた。 実織のバイト先で買った、ドーナツの匂いが、 俺の心を和ませた。