ドーナツを渡す私の手に触れる、紘夜。


うひゃー!

顔は真っ赤で、
手は震え、
紘夜の顔がまともに見れない。



「実織?」

囁く、声。


「7時っ、7時に終わるから!」

小声でなんとか伝える、と


「わかった。駐車場で待ってる」

そういいながら、
ドーナツの箱で隠すように、

ギュッ、と
私の掌を強く握りしめて、

紘夜は店をあとにした。


「今のオトコ、実織狙いかぁ、残念」

世菜が、私の方を見て呟く。


「あ、なるほど。そういうことか」

私を見て、世菜は
「お兄ちゃんの拒否理由はこういうことか」と、意味ありげに微笑む。


私は何も答えてないけど、きっと、世菜にバレた。


だって、
私の顔は真っ赤で、


紘夜に掴まれた掌が、熱くて、


しばらく動けなかった。