「うわ、スゴイいいオトコ!」

私の腕を肘でつつきながら、世菜は小さな声で私に呟く。


うん…
いいオトコ。


長身で、端正な顔つき。
どこか優雅な雰囲気で、黒いコートを着こなしていた。



って、

「紘っ…!」


ばふっ、と
思わず大声で名を呼びそうになって、両手で口を押さえた。


紘夜ーー!!


心の中で、大絶叫。


なんで?
なんで、こんなところに!?


訳が分からず、ボー然としていると、

「そのココナッツかかってるのと、カスタードのやつ。
それから…ビターチョコレートのを2つずつ」


相変わらずのいい声で、
ケースの中のドーナツを指差しながら、紘夜は注文していく。