「用は、それだけか? なら、もういいだろ。切るぞ」

『あぁ、それと、周りの連中がお前に縁談話を進めるだろうが、いつものような振る舞いで断る態度は改めろ。
愛想笑いの一つでもーー』

「それなら心配無用だ。今回は女を連れて出る」

『なに?ーー』

ガシャン、



驚いたような声を遮り、俺は受話器を乱暴に置いた。

その音に、自分が予想以上にイラついていたことが分かる。



いつものことだ。落ち着け。


そう、自分に言い聞かせる。

俺は机の上から黒い紙箱を手に取り、
中から黒い煙草を一本口にくわえると、
鈍色のライターで火を点けた。



ジジ、と燃え、紅く火がともる。

深く吸い込み、一つ、大きな溜め息とともに、煙が舞い上がった。


その煙を見つめ、だめだな、と、自嘲気味に笑いが零れる。


いつものこと、わかっている。
すべてーー。