冷たい雨に咲く紅い花【前篇】


「…実織、その男は誰だ?」

いつにも増して、
低く、威圧感のあるジュン兄の声…。


「え、えっと……、ほら、
前に私が体調崩したときにお世話になった真影さんだよ、うん」


「はじめまして。真影と申します。
実織さんとお付き合いさせていただいております」



ひぇーー!


な、なんて…
ズバッと率直な!


う、嬉しいけど…



でも、

「実織、と?……つき合ってるだと?」


ピキーン、と

凍ったジュン兄の声と、
ピク、と
眉が不快そうに歪んだのを、

私は見逃さなかった……