冷たい雨に咲く紅い花【前篇】


重い音をたてて扉が開き、

「なんだ、実織か…」

よりにもよって、
ジュン兄が素っ気ない声とともに現れた。


「う、あ…た、ただいまジュン兄」


必死に紘夜を隠そうとしたものの、長身の紘夜が私の後ろに隠れきれるわけもなく…


っていうか、
紘夜は隠れる気さらさらないし!



私のただいまの声を聞く頃には、ジュン兄の視線は私の頭上を通り越し、
後ろに涼しい顔で立つ紘夜に注がれていた。



ど、どうしよー!!

紘夜が追い返されちゃう!