冷たい雨に咲く紅い花【前篇】


「悪いが、もう離さない。
お前に突き飛ばされようが、蹴られようが」


そう言って、
紘夜は私を抱きしめた。


優しく、力強く、

そのぬくもりに包まれ、私の目からは、涙が流れた。



さっきまでとは違う、
あたたかい涙が…




「じゃあ、ちょっと挨拶に寄っていくか」


へ?

紘夜の言った言葉の意味がわからず、私の思考がストップする。



なに?

今、なんて?



「だから、せっかく実織ん家に来たんだし、家の人に挨拶していこうと思って」


「えぇー!?」