冷たい雨に咲く紅い花【前篇】


  †


「着いたぞ」

感情の感じられない口調で、紘夜が短く言う。


家に着くまで、何も話さなかった。


重く、息苦しい沈黙と、
甘い煙草の匂いだけが私達を包んでいた。



「ほら、早く帰って風呂に入れ」

ぽん、と紘夜が私の頭を軽く撫でる。


途端、

私の目から涙が溢れ、止まらず流れた。



自分でも驚くほど自然にーー……

止まらなかった。