最初は涼しい風が段々と暖かい風なり、私を包む。 そして、 紘夜は後部座席から黒いジャケットを取ると、私の体に掛けた。 「紘、夜?」 掛けられた黒いジャケットから、隣の紘夜に視線を移す。 「風邪、ひくなよ」 前を向いたまま、 ぶっきらぼうにそう言うと、紘夜は車を走らせた。 そして、いつもの黒い煙草を取り出し、ひとつくわえる。 慣れた仕草で、火を点けた。 私達を包む、甘い煙草の匂い。 それは、区切りの合図。