冷たい雨に咲く紅い花【前篇】


「か、帰るっ」

恥ずかしくて、
上手く頭が回らなくて、

私は、車を飛び出し、逃げた。


「あ、おい!実織!」

が、すぐに紘夜の腕に捕まる。


もーっ!
やだ、帰らせてよー


真っ赤な顔を見られたくなくて、
私の腕を掴む紘夜の腕が、力強くて、


紘夜は、男の人だと思うと、


また顔が熱くなった。



「なんで帰るんだよ?送るって」

訳がわからない、そういう感じで紘夜が言う。

「…いい。一人で帰る……」

うつむいたまま、小さな声で答える。


「…怒ったのか?」


違う、
怒ってなんかいない…


違うけど、
よくわからないけど、


なんか、
なんか、

紘夜の顔がちゃんと見れない。