「実織は嫌なのか?」 車の開かれたドアに片腕をのせ、 中にいる私を覗き込むように顔を近づける紘夜。 紘夜の低い声が、近い。 紘夜の綺麗な顔が、近い。 紘夜の、 甘い煙草の匂いが、近い。 思い出す、煙草の味。 唇に残る、あたたかさ。 紘夜が近くて、 紘夜の顔がまともに見られない。 きっと、 きっと、 私の顔は真っ赤だ。