冷たい雨に咲く紅い花【前篇】



「こんなのはダメー!紘夜!」

叫ぶ私に、
紘夜は顔をしかめる。


「なんなんだ、お前は。いちいちうるさい!」

「うるさい、じゃないでしょう!この手!この手はなに!?」

「なにって、だから流れ」

「流れ、じゃあない!」


ドーン、


と、力いっぱい紘夜を押し退けると、
油断していたのか、体勢が崩れた紘夜の体は私から離れ、車から外に出た。



よろけながらも、持ち前の運動神経で体勢を立て直し、車の外から中にいる私をイジワルそうに睨む紘夜。



その眼、怖いんですけど…



さっきまでの穏やかで優しい視線はどこへやら、

甘い雰囲気は、一気にどこかへ飛んでいった。