冷たい雨に咲く紅い花【前篇】



「……ごめんなさい。わからない、わからないんです。私にも…」


なにも、知らない。

紘夜のこと。



何を想って、

どこへ向かっているのかさえ…



「すみません。実織様を困らせるだけですね…」

静音さんは、少し頭を傾げ、寂しそうに笑った。


「紘夜様が戻られたら、
実織様は無事だと、元気に過ごしておられたと、伝えます」



ううん、
違う、違うよ。


「元気じゃ、ない。元気になんてなれないよ」



紘夜が、

紘夜がいなきゃ、



ダメだよ、私。