冷たい雨に咲く紅い花【前篇】



「紘夜、が?どうかしたんですか!?」

「いえ…何も。いつも通り、…元の紘夜様に戻られました」


元の、
紘夜?



「人を必要以上に近づけず、何かを一人で抱え、
…どこかツラそうで…。
そんな元の紘夜様に、戻られました」



そう告げる静音さんが、
悲しそうで、

ツラそうだった。




「紘夜…元気じゃ、ないの?」

震える、声。


紘夜の名を口にするだけで、

それだけで、



こんなにもーー……