「こんなに濡れて、風邪をひいてしまいますよ?実織様」
穏やかで、綺麗な声が私にかけられる。
「静、音さん…、どうして?」
静音さんは、
濡れた私の髪や制服を、淡い紫色のハンカチで拭いてくれた。
そして気づく、
静音さんがもう片方の手に持つ、
紅い傘。
この紅い傘は、
あの紘夜と出逢った、雨の夜に私が落としたものだった。
「実織様にこの傘とこの携帯電話を届けにまいりました。
紘夜様が、実織様に返すように、と」
差し出された紅い傘と
鮮やかなピンクのケータイを受け取る。
紘夜が…?
探して、見つけてくれたの?



