冷たい雨に咲く紅い花【前篇】


「どうしたの?実織、まだ体調よくない?」

「…ううん、違う。大丈夫だよ」

「なんか、あった?」



うん、
あった。あったよ。


いろんな事が……。




「どこか、お金持ちの家でお世話になってたんでしょ?」

「そこで、イヤな事でもあった?」


私は、無言で首を左右に振った。


怖い事、
驚いた事はたくさんあったけど、


今はもうイヤな事じゃない。


それは確かだった。