冷たい雨に咲く紅い花【前篇】


「実織…!? なんか、あったのか?」

「…何でもない、何でもないよ。ジュン兄…」



疲れたから、

と、ジュン兄の前から逃れる様に階段を駆け上がって、自分の部屋に入った。


懐かしい、自分の部屋。



あんなに、

あんなに
待ち望んだ自分の家なのに、


どうして、

どうして
こんな気持ちなの?



どうして、


涙が止まらないの?