見渡したけど、
どこにも紘夜の姿はなく、

高齢の運転手さんが前をずっと見ているだけ。



あたりまえだ、
私しか、乗ってないんだからーー


そう思って、自分の体を抱えて、
気付いた。




紘夜の、

黒いジャケット。



私が羽織っている紘夜のジャケットから、

紘夜の煙草の匂いが、した。




「…紘…夜…紘夜…」


羽織ったジャケットにしがみついて、



私は、泣き続けた。