あっという間の出来事に、 私は格子扉にしがみついたまま、 動けずにいた。 いつの間にか、 紘夜の姿は消え、 煙草の甘い香りだけが、 残った。 「実織様」 懐かしい声がして、振り返る。 そこには、 静音さんの姿。 「し、静音さんっ…」 思わず駆け寄ろうとすると、 静かで感情のない静音さんの表情が、 私の足を止めた。 「静音さん?」