冷たい雨に咲く紅い花【前篇】


離さないで……

お願いだから、離さないでーー


私はそう願った。

けど、


「……頼む。行ってくれ」

微かに震える、
紘夜の声。





「お前が今、行かなければ、
俺はお前を手放せなくなる」





紘夜の言葉が、

私の心に一言一言、
刻まれる。



その意味が分かると、

嬉しくて、涙が溢れた。