冷たい雨に咲く紅い花【前篇】


前の私だったら、
逃げ出したくなる怖さを紘夜に感じた。


でも、
気付いてしまった。




その奥に、
哀しさ、寂しさ、


優しさを
秘めている事を、


私は知ってしまったからーー。




「……で、でも、私だけ逃げるなんて…。
紘夜も一緒に逃げよう?」

「わからないヤツだな!」


鋭い紘夜の声にビクッとなり、
気付いた時には、




紘夜の胸に

抱きしめられていた。