「実織、ここで少しだけ待ってろ」

紘夜が、警戒した姿勢のまま告げる。


「やっ、置いてかないでっ」

「大丈夫だ、すぐ戻る。この様子なら、狙撃に失敗してここにはもういない」

「だったら、行かなくてもいいじゃない!」

「狙撃したヤツの痕跡を探してくる。薬莢か何かが残ってるはずだ。
それに、一応屋敷の周辺を見回ってくる。
恐がりのヤツがここには一人いるからな」



そう言って、紘夜はイジワルな笑みを私に向けた。


こ、恐がりって、
私のコト!?



むー、と私がふくれると、



「そのジャケットにしがみついて待っとけ」


そう言い残し、紘夜は軽やかな身のこなしで樹々の中に消えて行った。