「…しょうがねぇな、好きにしろ」 そう言って、紘夜は建物の壁伝いに身を隠しながら、様子を伺う。 私は離されない様に、紘夜のジャケットにしがみついて歩いた。 すると、 「ーったく、歩きにくい!」 紘夜が私を一喝。 「だ、だって…」 こわ、 こわい…… バサッ 紘夜が黒いジャケットを脱ぎ、 私に放り投げた。 「それでも着てろ」 その時になって、 私はこの11月の寒空に、撫子色の薄いドレス一枚だったことを思い出した。