冷たい雨に咲く紅い花【前篇】


  †


「実織様っ」

やっと紘夜様のお部屋の前で追いつき、
部屋の扉の前でしゃがんでいる実織様に声をかけると、


しぃー、
と唇に人指し指をあて、静かにするように私に訴えかける。


訳が分からず、
とりあえず近づくと、



「紘夜、今部屋にいないみたい。チャンスだよ!」

可愛らしく片目をつむり、私に合図を送る。


いえいえ、ですから誰も入ってはいけないとーー
と告げる前に、


ガチャ

「実織様っ、ダメでーー」

声を出した私の口を、扉を開けた実織様の掌が塞いだ。


「ダメだよ静音さん。声だしちゃ」

いえいえ、ダメなのは実織様の方です。
こんな所を紘夜様にみつかったらーー